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| 判例トピックス |
―― 譲渡担保権者の債権者が被担保債権の弁済期後に不動産を差し押えた場合と設定者による第三者異議の訴えの可否
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1.事案の概要
(1)Xが譲渡担保を原因としてAへ所有権移転。被担保債権の弁済期到来後、Aの債権者Yが本件不動産につき強制競売の申立てをし、差押登記をした。
(2)その後Xが債務全額を弁済して目的不動産を受け戻し、A→Xへの所有権移転登記を完了。XからYに対し強制執行の不許を求めて第三者異議の訴えが提起された。これが認められるか。
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2.最二小平18.10.20
(1)「不動産を目的とする譲渡担保において、被担保債権の弁済期後に譲渡担保権者の債権者が目的不動産を差し押え、その旨の登記がされたときは、設定者は、差押登記後に債務の全額を弁済しても、第三者異議の訴えにより強制執行の不許を求めることはできないと解するのが相当である」。なぜなら「設定者が債務の履行を遅滞したときは譲渡担保権者は目的不動産を処分する権能を取得するから、被担保債権の弁済期後は、設定者としては目的不動産が換価処分されることを受忍すべき立場にあるところ、譲渡担保権者の債権者による強制競売による換価も同様に受忍すべきもの」だからである。
(2)この考え方からは、それでは弁済期前の差押えであれば第三者異議が認められるのかということになりますが、それにもこの判例はあくまで傍論としてですが答えてくれています。すなわち「上記と異なり、被担保債権の弁済期前に譲渡担保権者の債権者が差し押えた場合は、設定者が弁済期までに債務全額を弁済して目的不動産を受け戻したときは、設定者は第三者異議の訴えにより強制執行の不許を求めることができる」。なぜなら「弁済期前においては譲渡担保権者は債権担保の目的を達するのに必要な範囲内で目的不動産の所有権を有するにすぎず、目的不動産を処分する権能を有しない」からであると。
3.譲渡担保をめぐる判例の整理
(1)譲渡担保権者は、債務者が被担保債務の履行を遅滞したとき(弁済期を徒過したとき)は、目的物件を処分する権能を取得する(最S46.3.25)。
(2)譲渡担保権者が目的物権の処分権能を取得した後も、換価処分を完結するまでは、設定者は被担保債務を弁済して所有権を回復する(受戻権の行使)ことができる(最S57.9.28)。
(3)譲渡担保権者が処分権能に基づき目的物件を適正に評価した額で確定的に自己の所有に帰せしめ(帰属清算型の場合)、又は第三者に売却したときは(処分清算型の場合)、換価処分が完結するから、設定者の受戻権は消滅する(最S62.2.12)。
平成19年2月8日
―― 不動産の取得時効完成後に当該不動産の譲渡を受けて所有権移転登記を受けた者が背信的悪意者に当たる場合
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1.事案のあらすじ
(1)Xは魚屋開店のため土地を購入したが、その後融資先銀行のすすめで更に隣地をAから購入した(約52u、価格80万円)。ところが当該土地の多くの部分がYが公道に通ずるための進入路と重なっていた。Yは建物所有目的で数筆の土地を購入した際、その部分も含まれると誤信してその部分を進入路として占有を継続していたものである。
(2)XからYに対し、所有権の確認と通路部分の舗装の撤去を求めて提訴。Yは反訴を提起してその部分の所有権や通行地役権の主張もしたが、本訴においてYは前主Aからの占有期間を含めて20年の時効取得を主張した(登記などの調査を怠ったことで過失があるので長期時効取得を主張したわけだが、それでも前主の占有を併せると23年程あったようである)。それに対してXから自分は時効完成後の第三者であり、Yに登記がないという主張がなされ、YからXはYの占有状況を知りながらあえて購入して登記した者であり、いわゆる「背信的悪意者」であるから、Yは登記なくしてXに対抗できるとの主張がなされた。
2.本件解決のための基礎知識
(1)善意・無過失の時効取得は10年、悪意又は善意でも過失のある占有の場合は20年の占有期間が必要である(民162)。
(2)占有者の承継人は、その選択に従い、自己の占有のみを主張し、又は自己の占有に前主の占有を併せて主張してもよい。ただしその場合は前主が悪意又は有過失であれば、承継人の占有も瑕疵のある占有となる(民187)。瑕疵付の占有を引き継ぐからである。
(3)不動産の時効取得は時効完成前に当該不動産を譲受けて所有権移転登記をした者に対しては登記なしに対抗することができるが、時効完成後譲受けて登記をした者に対しては対抗することができない。
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YはXに対抗できない。
との二重譲渡の関係(民177)と見るからである。
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(4)民法177条の第三者については、「実体上物権変動があった事実を知る者において、同物権変動についての登記の欠缺を主張することが信義に反するものと認められる事情がある場合には、かかる背信的悪意者は、登記の欠缺を主張するについて正当な利益を有しない(最S40.12.21)」。いわゆる「背信的悪意者排除理論」であり、Xが背信的悪意者に当たれば、Yは登記なしに時効による所有権取得を対抗できることになる。
3.判例の判断
「Yが時効取得した不動産について、その取得時効完成後にXが当該不動産の譲渡を受けて所有権移転登記を了した場合において、Xが当該不動産の譲渡を受けた時点において、Yが多年にわたり当該不動産を占有している事実を認識しており、Yの登記の欠缺を主張することが信義に反するものと認められる事情が存在するときは、Xは背信的悪意者に当たるというべきである」。
4.判例についての感想
学者の中には、「取得時効の完成した不動産をその名義のみの虚有的所有者から時効完成後譲受けた者は背信的悪意者として扱われるのを原則とすべきである」と主張するものがある(広中・物権法)。
現実の不動産取引において現地を調査しない者はまずいない。そうだとすれば当該土地がYによって進入路として長期間占有使用されてきたこと、それを否定すればYの所有地の利用が著しく困難となること、その様な土地であるからこそ価格が安かったことなどが判明する筈である。それにも拘らず敢えて当該土地を購入したということは「XがYを困惑させる目的で本件土地を購入したものとは認められないが
―― 二審である高松高H16.10.28」、背信的悪意者と認められる場合があるということであろう。
平成18年12月4日
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